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第四章 点と点をつないで・15

「待ってよ、修治さん」
 少し後ろから追いかけてくるミレイの声。俺達は山の中腹にそびえたつコントロールタワーと思われる建物へと向けて斜面を進んでいた。
 元々体力には自信のない俺だったが、SBT1での任務や特訓で色々やっている間に自分でも信じられないくらい身体能力が向上していた。おかげで急斜面な山道でも割合すんなりと進めるようになっていた。人間やればなんとかなるものだ。

「はぁはぁ……、もう先に先に行っちゃうんだから……」
 息を切らせたミレイがすぐそこまでやってきた。
「車で留守番でも良かったんだぜ。ほら……」
 差し出した手にしがみついてようやく斜面を登り終えるミレイ。
 下からだとコントロールタワーしか見えなかったが、この場所にあるのはそれだけではなかった。奥には発電施設そのものも静かに横たわっている。こんな大きな施設が丸ごと北海道から空間を移動してきたなどにわかには信じがたかった。

「よく見ると結構傾いているなぁ。中に入るのは危険かもしれないな」
「そうだね、向こうの発電施設の方に行ってみようよ」
 俺達は奥に見える発電施設へと歩みを進めた。

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第四章 点と点をつないで・14

「ミレイ、明日には忍の所へ戻ろうと思うから。向こうへ持って行く物とかあれば用意しとくんだぞ」
「うん、この子も連れて行ってあげていいよね?」
「ダメっていっても連れて行くんだろ?」
「へへぇ」
 シュガーの頭を撫でながら満面の笑みを浮かべるミレイ。
「まぁ、シュガーが側にいるほうが忍も退屈しないだろうしな」
「良かったね、シュガー」
「さて、それじゃ俺も部屋の掃除でもしようかな……」

 翌日、短い滞在期間だったSBT1を離れて忍たちの待つ北関東の町へと向かい出発する。
「それじゃ、忍君によろしくね。あと無理せずにちゃんと休むように言っておいて」
「了解!ゆみちゃん達は元気だったっていうのも伝えておくね」

ワンワン! 

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第四章 点と点をつないで・13

「そう……、確かにそれだと開発室が目的だったっていうのがビンゴかもしれないわね……」
 一通り施設内を見回ってきた俺達は、状況とそれを元にした俺なりの推測をゆみ子をはじめとする司令室の面々へと話した。
「でもなんで奴らが開発室の研究成果なんかを手に入れてどうするんだ?」
「それはあの連中も俺達と目的が同じだからだろ?」
「同じ目的?ってことは奴らの目的も向こうの世界へ行く事なのか?」
「俺はそう思うけどな。それはそうと開発室の連中が誰一人いないのはおかしいだろ?あいつらが来る前からすでに連絡取れなかったわけだしさ……」
「確かになぁ」
 司令室の面々は口々に思った事を口にしている。状況が少し落ち着いたこともあり、ようやく落ち着いて思考を働かせることができるようになってきたのだろう。

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第四章 点と点をつないで・12

「いやぁ、扉がドンドン鳴ったときは、またあいつらが戻って来たんじゃないかと思ってドキドキしたよ」
「ほんとほんと。しかし一時はどうなることかと思ったよ」

 食堂までの道のりでもあの連中と遭遇する事はなかった。辿り着いた食堂の扉の向こうには、司令室と同じようにテーブルやイスで作られたバリケード。その向こうには20人ほどの不安げな顔が並んでいた。
 残念ながらこちらにも俺の目当ての顔なかったが、大きな怪我や深刻な体調不良の人はいなかったのは何よりだった。

「それじゃ、俺達は他のフロアを見てきますんで。万一あいつらに出会ったらすぐに逃げるようにしてくださいね。あと、司令室の方へ連絡もお願いします」
「あいよ、任せときな。そっちも気をつけろよ修治君にミレイ」
 俺達は食堂の安全を確認し他のフロア調査へと向かった。

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第四章 点と点をつないで・11

「初日の作戦終了時間の30分前くらいかな。いきなり北海道支部との連絡が取れなくなったの。最初は通信系の機械の故障かと思って調べてもらったら異常はないみたいだったの。じゃあ、開発室の人に調べてもらおうと思って連絡したら、誰も通信に出てくれなくて……。結局あれやこれや皆で試してみたんだけどダメで、気がついたら夜中になっていて……それから……」
「落ち着いてゆみ子さん、北海道はともかく、開発室とも連絡取れなかったの?」
 ゆみ子も相当混乱していやのだろう、途中からどんどん早口でまくし立てるような口調になっていく。
「そうなのよ、その後部屋を見に行ってもらったんだけど、もぬけの殻だったって話よ。作戦中に誰一人いなくなるなんておかしいわ、絶対」
(確かに開発室の人達が1人もいないというのはおかしな話だ……。いったいどうなっているんだ……)

「それで、その後はどうなったの?」
 ミレイに促されて話を続けるゆみ子。
「結局、北海道支部との連絡はつかず終いだったわ。そしたら、転移反応のセンサーが北海道の太平洋側で今までにないような反応値を計測したと思ったら、いきなり数値が反転して、最後には他の数箇所にも突然反応が出てもうメチャクチャ。そうそうここから100キロくらい北西にも反応が出ていたわ」
 俺とミレイは目を見合わせる。恐らくその転移反応は俺達3人のことだろう。

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Appendix

一言

 あっという間に8月になりましたね。
 夏休みの予定がまだ決まっていないのが悲しいところ。
 実家に戻るつもりなのですが、その間の更新はどうしたものか……。

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プロフィール

おぐれしんじ

Author:おぐれしんじ
東京都で会社人をやっています。
趣味の小説ですが、ひとつよろしくお願いします。