「あれ、おっかしいな。スイッチ捻っても扉開かないや……」
道路の脇に立つ標識の根元に設置された、秘密の扉を開けるためのスイッチ。そのスイッチを先ほどから何度も捻っているのだが扉が開く様子が無く困った顔をするミレイ。スイッチの脇にしゃがみ込んだまま動かない彼女の姿をみて俺は車を降りた。
降りたその場所は俺と泉、あづさが最初に忍とミレイに連れてこられたSBT1へと繋がっている秘密の出入り口だ。
「どうしたんだ、なにかあったのか?」
「うん、何回スイッチ捻っても開かないの。今までこんな事なかったのに」
「ちょっといいか。よっと……、ダメだな扉の故障か?」
ミレイに代わりスイッチを捻るも扉が動く気配はない。やはりスイッチの故障だろうか。
「仕方ない、手動で開けようか。ミレイ、手動用の所にスイッチ回しといてくれるか?」
緊急時用に手動で開ける事が可能なのを思い出した俺は、ミレイにスイッチを手動に合わせてもらい扉を力いっぱい引っ張った。
「よっと……、ふぅ……」
「ご苦労様、はい飲み物」
入り口の扉を開けて、車を通路内に入れる。そしたら今度は扉を閉める。普段はスイッチ1つでできることも体を使うと意外と重労働だ。
「あれぇ、通路の明かりも点かないよ。これも故障なのかな?」
「停電なのか故障なのか……。変な感じだけどとりあえず先へ行こうか」
ミレイから手渡されたペットボトルを口にしながら俺は車を進めた。
明かりのない通路をヘッドライトを頼りに進む俺達の乗る車は、なんとか第2駐車場へと辿り着いた。
「暗いと怖いねぇ。お化け屋敷みたいでなんかドキドキしちゃった」
「お化け屋敷ねぇ……。それより、建物の明かりは点いているみたいだから停電じゃあなさそうだな。でも車の数はやけに少ないな。皆出払っているのかな」
俺は周囲を見渡す。通ってきた通路は相変わらずの真っ暗で吸い込まれそうな雰囲気だ。駐車場を見ると数台の車が停められており、その向こうに見える建物の窓からは明かりが漏れている。
「とりあえず司令室に行ってみようよ。泉さんやボスも戻っているかもしれないよ!」
「そうだな、行ってみよう」
俺達は司令室のある建物へと入った。
いつも通りエレベータに乗りいつもの廊下を司令室へと向けて歩く。ただ1ついつもと違うのは司令室へと向かう通路で誰とも出会わなかったことだ。普段人の出入りが多い司令室への道のりということで、ミレイも疑問に思ったのか先ほどから辺りをキョロキョロと見回しながら俺の隣を歩いている。
そうこういう間に俺達は司令室の前までやってきた。目の前の分厚いドアの向こうがSBT1、引いてはトラベラーズガーディアンの中枢ともいえる中央司令室だ。
ドアの右側の壁に設置された入室管理用のセキュリティシステムのボタンを順番に押し、人差し指の指紋をかざすミレイ。セキュリティシステムのディスプレイには『OK』の文字が表示される。
だが、ドアは一瞬ガタンと動いたものの何かに引っかかったように開かない。
「あれ、開かないよ。ドアも壊れているのかな?」
その後何度かドアを開けようと試みるもやはりドアは開かない。
「おっかしいなぁ、お〜い、開けてよぉ!」
たまらずドアをドンドンと叩くミレイ。
「ボスぅ!泉さん!ゆみちゃん!誰かいるんでしょ?」
しばらくドアを叩いたミレイ。だが諦めたのか俺の方を振り返る。
「誰もいないのかな?」
「司令室が無人なんてことはないだろ。でもさっきからあちこち動かなかったり、人がいなかったり明らかに妙だな……」
とその時、ドアの奥から微かに声が聞こえた。
続く
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